2013年02月04日

『ゴールの見えない物語』サイモン・クーパー

最近は、日本の紙面にもコラムを掲載するようになり、知名度がグンと増した(に違いない)サイモン・クーパーの『ゴールの見えない物語』を読んだ。

サイモンの新作が出版されていないかな〜、とアマゾン探索隊を派遣したところ、この本を発見して即購入。



ところが、届いて気づいたのだけど、これはあくまでサイモンの編集なわけで。
だから、サイモンは前文ぐらいしか執筆してないのだけど、とりあえず読了。

この本は、フットボールのスーパースター(マラドーナ、ロナウド、リネカー、ベルカンプ、ファンバステン、バティゴール、ミロシェビッチ、カントナ、プラティニ)と良い意味、悪い意味で縁のあった記者たちが、それぞれのスターについて書いている、エッセイのような物語のような9篇で構成されている。

ひと言でスパッと切るなら、失礼だけど全体的にはそれほど面白くない。
でも、うえに出てくるスターたちがピッチの中で輝きを放っていたころに重なるように、ちょうど怠惰な青春時代を過ごしていた僕らは、この本からきっと感じることができると思う。

古いアルバムを開く手が感じるような、喜怒哀楽ごちゃまぜのノスタルジーを。
そして、あのころの僕らのことを。

僕もどうにも懐かしくて、この本に収録されている選手たちのプレー集をyoutubeでもう一度見てみた。
甘美な思い出を現在の自分に突き付けてみたくて、そんなね、墓を掘り返すようなことをしたわけ。

当時見ていた感じ(もちろんメイクアップしたように美しくイメージが増幅されている)と、現在の汚れちまったさっかーがだいすきなおじさんが再見したプレーで、肖像画を書き直したのが
・ベルカンプ
・プラティニ
の二人。
ベルカンプは、アーティストというより職人の姿に見えた。宮大工のような、特殊技能を持った頑固な職人のそれに。どうして宮大工という言葉が出たかというと、つま先が鑿のようだと感心したからなんだけどね。
足の指先一本一本を繊細に操作して、トウ気味にボールを扱っているように見えるんだ。
それでいて、キックに正確な多様性があるのだから驚いてしまう。

プラティニは、ゴールシーンにやたらと壁パスが入っているのが好ましかった。
バルサのワンツーとは少し違う、遊びのような壁パスなんだ。
僕は、壁パスを愛する。
もっとも人が密集した地域を、ボールを持たない僕がすり抜けていく。出口でボールと再会する。
大怪盗の仕業のような、壁パスを僕は愛してやまない。
ワンツーみたいな、機械的な表現はよろしくない。
壁パス、がいいのだ。
一人で、小さな砂埃をおこしながら、よその家の塀にボールを当てながらドリブルする子どもの「こころ」が、その表現に蓄えられているようで、いいのだ。

そして、やっぱりカリベンはプラティニを目指すべきだ。
トップなど辞めたがよい。プラティニはあのポジションで得点王になっている。
欲しいだけ、ゴールは奪えるはず。


2011年12月19日

ガッザの涙

最近読んだフットボール本




この身勝手なブログを読んで下さってる、僕の友人たち(みなさんのことを、そう思わせてください)は、僕がガッザことポール・ジョン・ガスコインのことを愛して止まないことをご存知でしょう。
何度かガッザのエントリもあるしね。

学生時代、同好会のユニフォームを作るときに背中に名前を入れるか入れないかという話になったことがある。
そのとき、僕は勇んで
「オレ、kazzaにしたい」
と今考えたら穴どころか墓に入りたくなるようなことを口走ったのだけど、そのぐらい好きだった。


どこが好きかって?
そりゃあ、ガッザの背中には羽根が生えていたから。
獰猛なエネルギーを発散する肉体に同居する、嘘みたいに軽い翼があった。

90年のイタリア大会で、たかむら君にガッザの存在を教えられて、「スゲ」
セリエ時代は、こうち君家で、ガッザを見てはシビれていた。

そんな僕だけど、今さらこんな本があるのを知った 。

で、読んだんですが。
これは、僕が今まで読んだフットボール関連の本の中では、ベストオブベスト。
あえて、言います。
必読です。
でも、僕がガッザを好きだからそう感じるのかもしれないなw

それを抜きにしたって、この本は面白いし、考えさせられるし、涙だってでる。
katsuの涙。なんちゃって。


読後の、感想。

ガッザは、とにかく存在すること(死)を恐れていた。
不条理に敏感な哲学者か、詩人のように。
だから存在の恐怖から逃避するために、彼は存在を忘れることにのみ集中した。
酒も、盗みも、馬鹿騒ぎも。
彼にとってはフットボールすら現実逃避でしかなかったんだよね。
ピッチでは、すべてを忘れられるから。


生きている罪の意識と、死という不条理と闘い続けたガッザ。
彼はフットボーラーでなければ、やっぱり詩人だったに違いない。
一労働者だったかも知れないけど、酒場の大いなる詩人であったろうね。

自分を解放するために、そのインスピレーションとエネルギーのすべてをピッチ上に赤裸々に吐き散らした、ホントに珍しいプレイヤーだと思う。

読んでいて驚くのは、これは日本の私小説、それも太宰治のそれのようだと思えるところ。
酒に頼り、人に迷惑ばかりかけていると思い込んだガッザが、電車に飛び込もうと電車を待つが、まるで電車の気配がない。
駅員に聞くと、終電後だと言われ、
「自殺しようとしてもうまくいかないなんて」と泣きながら、元妻に電話をするくだりなど、何とも言い難い「らしさ」がある。

英国で「背筋が凍るほど」の赤裸々な告白が絶讃されたようだけど、その通りだった。

ほかのプレイヤーの評価を書いていたりしているところも、なかなか楽しい。
ガッザが同世代でナンバー1、と言う選手は?
ルーニーのことは??
面白そうでしょ??


いやー、オススメです。
本の中から、たくさん引用しようかと思ったけど、ひとつだけ抜いて終わります。

『もう一度子供のころのぼくに戻ってみたい。いつも屈託のない笑顔を浮かべて幸せで仕方なかった、あの七歳の子供の頃に。あれ以来、ぼくは他人のご機嫌取りのために作り笑いばかりしてきたっけ』


お前の文章みたいだな、とmatsu氏に笑われそうですが。

2011年09月04日

『完全敵地』 加藤久

加藤久さんの『完全敵地』を読んだ。








先日のワールドカップ三次予選を見て、ドイツワールドカップの最終予選、同じ北朝鮮との試合で、やはり同じようにロスタイムに大黒が決めたシーンを思い出した。

そして、そういえば・・・と本棚をゴソゴソして取り出したのがこの本。
当時日本代表のキャプテンだった加藤さんが、ワールドカップ・メキシコ大会のアジア予選を綴ったノンフィクション(そりゃ当り前か)。


ワールドカップのアジア枠が2つで、西アジアと東アジアでそれぞれ一国だけがワールドカップへの切符を手にすることができた頃の話。

木村和司の「伝説のFK」が生まれた、あの1985年である。


僕はその当時、もちろんもう小学生の高学年だったが、ほとんど記憶にない。

久さんの性格や語り口のせいなのかも知れないが、当時の日本代表の空気を冷静にかつ丁寧に伝えてくれるので、そうとうに読みやすい。

東アジアの最終の1枠を決定する日韓戦を前に、ホテルで同室だった木村和司が加藤久に語るひと言が、がーんとなるぐらい印象的だった。
「キュウちゃん、行きたいね、メキシコ。人生変わると思うよ」

そんな時代だったんだよね。
本書によれば「ナンバー」誌でさえ、一次予選を突破できれば「よし」としていた時代。

そんな先人たちの、熱い「憧れ」が今の日本代表を作ってきたんだな〜。
知らず、胸が熱くなったよ。


この本、当時の記録を見るものとしても楽しいんだけど、実は巻末の「あとがき」が秀逸なんだ。

久さんは、
「サッカーは進化している」という言葉に、違和感を唱え始める。

確かにルールの変更や戦術の進化によって「チームとしての」フットボールは進化していると認めながら、久さんはこう言うのである。

「ところが『チーム』から『個』に焦点を当て直してみると、”サッカーは進化している”というフレーズは、どうしても霞んでくる」

止めて、蹴るという基本技術については、現在の選手よりメキシコ五輪時代の方が上だという意見を上げ、さらに久さんは「釜本さん以上の選手」を見たことがないという。
そして、アジアでこれまで釜本と同レベルだった選手は、韓国のチャブングンだけだと。

そして、最後は「強く正確にボールを蹴る」ことが一流と二流を分ける、と、結ぶ。

なかなか、ズシリと重い言葉。
まさに「強く正確なボールを蹴る」ような論調だよ。


最後に、メキシコ予選当時、森コーチがベストと思って選んでいたイレブンはこちら。
今の日本代表と並びが似ているのか?
4213です、標記上。
()カッコ内は現代表

GK:松井 清隆 (川島)

DF:松木安太郎 (内田)
DF:加藤  久 (今野)
DF:石神 良訓 (吉田)
DF:都並 敏史 (長友)

MF:宮内  聡 (遠藤)
MF:西村 昭宏 (長谷部)

MF:木村 和司 (本田)

FW:水沼 貴史 (香川)
FW:柱谷 幸一 (李)
FW:原  博美 (岡崎)

オッカンこと岡田武史選手は、この大会を通じて負傷の選手に代わり1回出場。
(全く悪意ありません)

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